腕時計のプロが教える高品質なサステナブルウォッチ5選

はじめに

2030年までに解決すべき地球環境や社会の問題として国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は今や腕時計業界でも注目のキーワードとなっています。各ブランド持続可能な開発目標達成に向けサステナブルな要素を取り入れた時計の開発を積極的に行うようになり「エコな素材を使った時計」や「社会問題の解決」を実践するブランドに価値が置かれる時代になりました。

一方、気候変動や環境の変化に対して意識が高まる中で、時計ユーザーの意識にも変化が見られるようになりました。今や多くのユーザーがサステナブルな腕時計を身につけておしゃれを楽しみたいと考えるようになっています。最新のデロイトスイス(Deloitte Swiss)による腕時計の業界調査では、顧客の60%が時計を購入するときにサステナビリティを意識しており、「ミレニアル世代」と呼ばれる人々の約71%は、サステナブルな要素がある時計を購入する傾向があるそうです。

この様な「サステナブルウォッチ」の需要を受け、72%以上もの時計ブランドが労働環境自然環境に重点を置いたサステナブルな時計の生産に力を入れるようになりました。その結果デザイン性に優れたサステナブルウォッチが誕生しました。そして今では、これまで市場を独占してきた“老舗の腕時計”と比べても遜色のない高品質でサステナブルなモデルを数多く目にするようになったのです。

しかし、サステナブルウォッチが注目された結果、見せかけのサステナビリティを誇示する、いわゆるグリーンウォッシュな腕時計ブランドが腕時計市場に出回るようになりました。グリーンウォッシュとは「グリーン(=エコや自然環境に配慮した)」と「ホワイトウォッシュ(=上部を取り繕う)」の造語で、自社ブランドイメージ向上の目的のため根拠なくエコや環境に配慮した取り組みを行っているように見せかけることを指します。例えば第三者機関からの認定がないにも関わらずサイト上に「認定」と記載したり、森林や海の写真を掲載し、自然環境に配慮したCSR活動に従事しているかのようなイメージを植えつける宣伝がそれにあたります。このグリーンウォッシュは環境意識の高い消費者に誤解を与えるため環境NGOなどから問題視されています。

このような上辺だけを取り繕ったグリーンウォッシュ企業に安易に騙されるのではなく、環境に配慮した高品質な「本物のサステナブルウォッチ」を見分けるにはどうすればいいでしょうか。

この記事では腕時計やファッション専門家のリサーチをもとに、本物のサステナブルウォッチと見せかけのグリーンウォッシュな腕時計の違いを説明します。また最後に今後買うべきおすすめのサステナブルウォッチを5つご紹介しています。ファッション業界の意識の変化とともに、腕時計で「おしゃれを楽しむ」ことと「持続可能な社会への貢献」が両立できる現代、せっかく買うなら高品質なサステナブルウォッチを選んでみてはいかがでしょうか。

サステナブルウォッチはこれまでの腕時計と何が違うのか?

環境や社会問題に関心がある腕時計ユーザーにとって、サステナブルウォッチはすでに身近なアイテムかも知れません。一方でサステナブルウォッチを購入したことがないユーザーには、どの様なサステナブルウォッチが最適なのかを選ぶことは、とても悩ましい問題になるでしょう。

市場に出回っているサステナブルウォッチのほとんどは従来の腕時計とルックス、デザイン、質感が似通っています。つまり時計の外観だけではそのモデルがサステナブルウォッチかそうではないかを区別するのは容易ではないのです。

一般的にサステナブルウォッチやサステナブルな時計ブランドは以下の様な特徴があります。
  • 温室効果ガスや二酸化炭素の削減をめざし、リサイクル可能な素材で作られている。
  • 企業の利益の一部を教育支援や環境破壊の抑止、健康支援などの社会貢献活動に還元している。
  • 自社が雇用する労働者に対して倫理基準を満たし、公平な賃金支払い、健全な労働環境を確保している。
  • 自社ブランド製品の製造過程や使用されている原材料が明確に開示され、企業活動透明性担保されている。

実際に時計ユーザーの多くがデザイン性に優れ、環境に配慮したサステナブルウォッチに満足しているとの報告もあります。大量生産・大量消費の時代は終焉を迎え、かつて高級腕時計で社会的ステータスを誇示していた時代にも変化が訪れました。今やサステナブルウォッチは単におしゃれアイテムというだけでなく、身につけることで自身が環境や社会に貢献しているというアイコンの役割も担っているのです。

しかし、SDGsを推進する高品質なサステナブルウォッチは何を基準にして選べばいいのでしょうか。また本物のサステナブルウォッチと“グリーンウォッシュなサステナブルウォッチ”をどう区別すればいいのでしょうか。次に高品質でサステナブルな腕時計の条件を4つご紹介します。

時計の専門家に聞いたサステナブルウォッチの条件

条件その1: 高品質で環境に配慮した素材を使用

サステナブルウォッチと聞いてまず一番に時計の原材料に環境へ配慮したリサイクル素材が使用されているかどうかが挙げられます。多くのサステナブルウォッチの原材料は、環境に配慮した素材が使用されています。その中でもユーザーのことを考えた素材が使われているか確認することは大切です。例えば316ステンレス鋼(316ステンレススチール)は100%リサイクル可能なため、環境に配慮した素材であると言えます。さらに316ステンレス鋼は衝撃に強く他のステンレス素材より防食性に優れているため、金属アレルギーが起こりにくいとされています。

また近年ヴィーガンレザータイプストラップが注目されていることはご存知でしょうか。ヴィーガン(=動物性の原材料を退ける)レザーとはその名のとおり、動物の革を使用していないストラップのことを言います。このヴィーガンレザーには有機汚染物質や毒性のある副産物を一切含まないリサイクル可能な原材料が使用されています。 さらに腕時計のパッケージFSC(森林管理協議会)による認証を受けた素材が使用されていることも、その時計ブランドがSDGsに貢献しているポイントになります。FSC認証とは環境ラベリング制度の一つで、持続可能な開発目標が掲げる森林の利用と保護を目的としています。第三者機関が評価・認証を行い、FSC認証を取得したブランドは、管理された森林から産出した素材を使用しています。実際に“サステナブル”を謳っているブランドであっても、何を基準に判断するかは難しいところですが、FSCの様な第三者機関から認証を受けていることは、一つの判断基準となるでしょう。

条件その2:腕時計ブランドの社会的責任と透明性

前述したように、サステナビリティを謳う時計ブランドの中には製造工程や原材料を十分開示しておらず、労働形態が不透明な企業も数多くあります。サステナブルウォッチを購入する判断材料として、自社サイトに時計素材や労働環境が掲載されているかを確認することも、サステナブルウォッチを選ぶ時に重要になります。

海外ブランドの場合、労働倫理において欧州労働基準(European labor standards)等を満たしていることが信頼の目安になります。今日、多くの時計ブランドがアジアなどの欧州圏外に製造拠点を置いています。この基準は自社から離れた場所にあったとしても公平で安全な職場環境が確保されていることを求めています。もしサイト上で労働環境に関する情報が見つからない場合、社会的責任や労働倫理基準を満たしていない可能性が考えられます。

サステナブルブランドのもう一つ重要なポイントとして自社サイト上で温室効果ガス二酸化炭素削減の取り組みに関する情報を積極的に開示していることが挙げられます。例えば環境に配慮した時計メーカーは二酸化炭素の排出削減のためカーボンニュートラルなオフィス環境で、自社から出るプラスチック量の検出を定期的に行い、自社の製造工場で溶剤を再利用することで汚染を減らす取り組みを行うとともに、それらの成果をサイトに掲載しています。

この様に企業活動の透明性はそのブランドがサステナブルな取り組みを真剣に行っているかどうかを判断する基準になります。

条件その3:持続可能な社会に貢献するための具体的な取り組み

サステナブルな腕時計ブランドは地球環境だけでなく地域社会の問題へ目をむけ、より良い未来をつくる具体的な取り組みを行っています。

“サステナビリティ”を掲げるブランドの中には公式サイトで具体的な取り組みを明記していないものもあります。一方で「社会貢献活動」を企業の責任として行っているブランドは環境汚染対策や、教育、貧困問題など持続可能な問題を支援するため利益の一部を寄付するような取り組みを行い、その活動成果を公式サイトに掲載しています。後者の様に地域社会や環境問題への取り組みが具体的に明記されている時計ブランドは本当の意味でサステナブルな企業であると言えます。反対にグリーンウォッシュ企業は具体的な取り組みを明記しないまま自社がサステナブルな取り組みを行っている様な印象を植え付ける場合があることもふまえ、購入時にはサイトに記載されているその企業の社会貢献活動に目を通してみることをお勧めします。

条件その4:時計細部に至るまでバランスが計算され個性が引き立つデザイン

ここまでサステナブルウォッチの背景にある企業の取り組みに着目してきましたが、腕時計の品質自体も時計選びには重要なポイントになります。実際、高品質な腕時計は身につけるほどに愛着が沸き購入から何年、何十年経っても変わらず手元を輝かせてくれます。その結果、同じものを長く使うことより環境負荷を減らすことにつながると言えます。

時計の品質を見極めるうえで重要なポイントはケース、リューズ、秒針や分針など各パーツの細部へのこだわりが感じられることです。細部まで緻密にこだわって作られたモデルは一見するとシンプルですが、時計全体のバランスや配置が見事に計算されていて、時計職人の想いが投影されています。

 例えばクオリティの高いサステナブルウォッチはリューズの彫刻にも独創的なデザインが施されています。また文字盤の上を走る小さい針、特に一番動く秒針にブランド独自のデザインが見られます。言い換えればクオリティの高いサステナブルウォッチはシンプルに見えて個性的、腕時計でおしゃれを楽しむには最適な時計と言うことになります。

一方、品質の良くない腕時計は細部にオリジナリティを感じることはできません。リューズや秒針、ケースなどのデザインが単調なので早く飽きる可能性があります。カジュアルな腕時計の中にはデザイン性が乏しいにも関わらず、3万円近くする腕時計もあります。サステナブルウォッチを購入するときは時計のディテールを観察するようにしましょう。

ランキングの評価方法

ここからは今話題のサステナブルウォッチをランキング形式でご紹介します。このランキングは有名なウォッチメーカーや腕時計デザイナーなど、腕時計業界のプロの意見をもとに、ファッションライターがデザイン、使われている素材の品質、価格帯、精巧さ、顧客満足度など様々な角度から徹底検証したものです。これからますます注目されるサステナブルウォッチ。今ここでチェックしてみてはいかがでしょうか。

時計業界が注目するサステナブルウォッチ5選

ここまでサステナブルウォッチに関して様々な角度から検証してきましたが、ここからは時計のプロのアドバイスとインターネット上のカスタマーレビュー評価をもとに、サステナブルウォッチTOP5をご紹介します。おすすめポイント、気になる点もあわせてご紹介しますので、購入の参考にしてみてください。

1.Nordgreen /フィロソファ

おすすめポイント
  • どんなスタイルにもあう個性的なデザイン。
  • 時計本体には、金属アレルギーの可能性が極めて低く100%リサイクル可能な316Lステンレス鋼を使用。
  • リューズ、ケースに至るまで時計全体のバランスを考えたデザイン。“時間の流れを感じられる”アシンメトリーな秒針からはデザイナーのこだわりが感じられる。
  • デンマークのミニマルなデザインを基調とし、高品質な日本製ムーブメントを搭載。
  • 購入代金の一部を選択した慈善団体に寄付できる社会貢献プログラム。
  • 欧州労働基準の規範に準拠した労働環境。
  • 高品質でリーズナブルな価格帯。
  • 購入から14日以内の返金保証。
気になる点
  • 人気モデルなため在庫がないことがある。
  • 2017年にスタートした新進気鋭のブランドであるため、知名度はこれから。

評価コメント

サステナブルウォッチランキング一位に輝いたのは北欧デンマークの腕時計ブランド、ノードグリーン(Nordgreen)フィロソファ(Philosopher)です。腕時計の各パーツには上質な素材を使用し価格もリーズナブル。北欧の“ミニマルスタイル”を採用した端正なルックスが腕時計を身につける人の個性を引き立たせます。

ノードグリーンはデザイナーにヤコブ・ワグナー(Jakob Wagner)氏を起用。プロダクトデザイン界では知らない人はいない“巨匠”と称される人物です。ワグナー氏はこれまでBang & Olufsen、Hay、Capelliniをはじめ数々のプロダクトデザインに携わってきました。また世界三大デザイン賞の一つでもある「iFデザイン賞」5回受賞するなどデザイン界で数多くの偉業を達成している人物でもあります。フィロソファの魅力は秀逸なデザイン性にあります。装飾を最小限に抑えたミニマルスタイルを基調とし、一見するとシンプルですが細部のデザインが非常に緻密。先端にいくにつれて細くなるアシンメトリーな秒針はゆっくりとした時間の流れを感じさせてくれます。ワグナー氏はこの秒針を「常に時間の流れを刻んでいる」と表現しています。

ノードグリーンはサステナブルな腕時計ブランドの第一人者であると言えます。例えば丁寧に磨き上げられた316Lステンレス鋼を使用した時計本体は100%リサイクル可能。また数あるストラップの中でもGREENGUARD(グリーンガード)認証を取得しているヴィーガンレザーは有機汚染物質やその他の有害な副産物を一切使用しておらず、自社の環境配慮への徹底ぶりが伺えます。時計のパッケージにはFSC認証を取得したものを使用しており、製造溶剤の99%を再利用することで廃棄物を最小限に抑えています。またノードグリーンの自社オフィスでは温室効果ガス削減のための様々な取り組みが行われています。さらに自社製品が製造されている香港の工場は欧州労働基準の規範に準じており公正な賃金の支払いと安全な労働環境が確保されています。

環境保護の観点だけでなく、時計購入者参加型の「社会貢献プログラム」を実践している点も高評価のポイントとなっています。ノードグリーンでは2017年の設立当初より世界各国のNGOと協力し「衛生・健康」「教育」「環境」の3つの観点から支援が必要な人々や地域へ精力的な慈善活動を行っています。「社会貢献プログラム」では顧客が時計を購入するときに上記3つのNGOを選択することができます。購入利益の一部が上記の支援が必要な人々や地域へ送られます。この購入に対しての追加料金はなく、購入者は時計の裏面に刻まれているシリアルナンバーよりどこのNGOへ寄付したかが分かる仕組みになっています。ノードグリーンの時計を購入すると、2か月分の清潔な水を1人分、中央アフリカへ提供することができます。また、インドの子ども一人に対して1か月間の教育支援を、中南米の熱帯雨林約200平方フィート(約19平方メートル)の保護を選ぶこともできます。この様にノードグリーンがサステナブルウォッチとして高く評価される理由には時計のデザインや品質だけでなく、時計を通して世界の人々や地域に還元できることが挙げられます。ノードグリーンの自然環境保護や社会貢献活動は公式サイトに掲載されています。自社のSDGsに対する姿勢や責任意識の高さ、企業の透明性も高評価のポイントとなっています。

オンライン総合評価サイト Trustpilot の3,000件以上カスタマーレビューでは5段階のうち4.8と、多くの顧客から高い評価を獲得しています。

現在、Supremestyle.jpの読者に特別に、クーポンコード「SUPREME15」を公式ウェブサイトでご利用したら、Nordgreenの腕時計に15%OFFがもらえます。ぜひ、ウェブサイト見てみてください:

2.Solios/ソーラーホワイト

おすすめポイント
  • 環境に配慮したユニークなソーラー腕時計。
  • 視認性に優れエレガントなルックス。
  • 電池交換の必要がない太陽光充電。
  • 環境に優しい技術を使用し、100%リサイクルパッケージを使用。
  • 高い防水機能。
  • 環境や社会問題に対する自社の明確な取り組み。
気になる点
  • 比較的平凡なデザインで際立った個性を感じられない。
  • 労働環境が十分に開示されていない。
  • デザインの特徴が少ない割にはやや高価。

評価コメント

カナダ発のサステナブル腕時計ブランド、ソリオ(Solios)ソーラーホワイト(The Solar White)は文字盤の下にソーラーパネルを配置することで太陽光充電を可能にしたサステナブルウォッチです。環境への負荷を極力減らしたエコな時計と呼ぶにふさわしい逸品。時計自体は環境にやさしい技術を用いた高品質な素材で作られており、清潔感があってエレガントなルックスが魅力のモデルです。文字盤には再充電可能な太陽電池を使うことで従来の時計が避けて通れなかった電池交換の必要を排除し、太陽光で充電することで何年も使い続けることができます。ケースにはリサイクル可能な316Lステンレス鋼を採用。高品質で耐久性に優れた時計であることが伺えます。ソリオはSFC認証を取得した100%リサイクル可能なパッケージのみを使用することで温室効果ガスの削減に努めています。ソリオのソーラーウォッチは防塵性、耐熱性、耐化学反応に優れた3気圧防水となっています。

他社ブランドと比較しても自社の自然環境への貢献が非常に具体的に示されています。ソリオは毎年メイク・ア・ウィッシュ(Make-A-Wish)やDavid Suzuki Foundation、Rainforest Trustなどの社会活動団体へ利益の一部を寄付する活動を行っています。

この様にサステナブルな取り組みに尽力する一方で、ケースやリューズ、秒針などのデザインが単調なため他のサステナブルウォッチとの違いがあまり感じられません。時計で個性を出したいユーザーにはやや物足りないかもしれません。とは言え高品質でエレガントなルックスで、テクノロジーを結集した未来志向の時計である点は高評価につながっています。

3.TIVC/ピニャテックス

おすすめポイント
  • リサイクル可能なエコ素材のみ使用。
  • パイナップルの葉からつくられたオリジナルのピニャテックス(Pinatex)ストラップは着け心地も良く環境に配慮した素材。
  • 環境や地域社会に対して具体的な社会貢献プログラムを実践。
  • 自社の社会的責任を明確に示し、就労環境が整っている証拠でもあるSA8000取得。
気になる点
  • パッケージに関して十分な開示がされていない。
  • ケースの素材が明確に記されていない。
  • デザインが少し単調で職人の技術が感じられない。
  • デザインに個性が感じられない割にやや価格が高い。

評価コメント

オーストラリアに拠点を置くTIVC(Time IV Change)は環境や動物愛護に重点を置くサステナブルウォッチを代表するブランドです。環境保護を謳うブランドだけあって動物性の素材を一切使わず、エコな素材のみを使用するなどその取り組みは徹底されています。中でもピニャテックス(Pinatex)と名づけられたヴィーガンストラップは同社が提携しているフィリピンのパイナップル農家から廃棄される予定のパイナップル葉の繊維で作られており、生分解性でアレルギー性の低い素材となっています。100%リサイクルアルミニウムを使用することで温室効果ガスの排出削減に努めている一方で、ケースに使われている原材料がすべて明確に開示されていません。またパッケージ素材に関しても十分な情報が提供されていないことも気になります。

しかしながら自社のヴィーガン時計の利益の約10%を環境や動物保護を推進する慈善団体へ寄付するなど、TIVCの環境保護に対する取り組みは高く評価できます。さらにTIVCは社会的な責任に関しても明確に記載しています。自社の香港工場で生産されている製品は労働環境が整備されている証拠でもあるSA8000認証を取得しています。TIVCのピニャテックスは環境や動物の保護を実践し、労働環境も整備されたエシカルな腕時計だと言えるでしょう。

サステナブルという点では評価の高いブランドである一方、デザインやルックスが単調なのが気になります。時計でファッションに個性を出したい方やデザイナーのこだわりを感じたい方にとっては物足りないブランドかも知れません。

4. Tense Watch/スモールハンプトン

おすすめポイント
  • 1971年から続くハンドクラフト腕時計の老舗ブランド。
  • 使用される木材は100%天然の再生木材、エコな素材を使用。
  • 環境や社会問題に対する明確な取り組み。
  • 自社の社会的責任を明確に開示。
気になる点
  • パッケージの素材が十分に開示されていない。
  • 腕の細い方には多少分厚く感じるかもしれない。
  • 職人の技術や個性にやや欠けている。
  • デザインを考慮すると価格が割高と感じるかもしれない。

 

評価コメント

サステナブルウォッチの代表ともいえる木製腕時計。木製腕時計ブランドの中でテンスウォッチ(Tense Watch)は“最も高品質な木製腕時計”として長年、多くのユーザーに支持されてきました。テンスウォッチの代表モデル、スモールハンプトン(Small Hampton)はアフリカ、アメリカ、カナダ各国から取り寄せた再生木材から作られています。テンスウォッチは生木を一切使用せず再生木材から腕時計を作っているところが高評価につながっています。なにより他の木製腕時計ブランドがプラスチックを使っている中でステンレス製の高品質な日本製のムーブメントを採用しているところが大きなポイントです。手元にしっくりなじむ重厚感があり、耐久性に優れた仕上がりになっています。

同社は自然環境保護の必要性を唱えている「1% For The Planet」に加盟することでサステナビリティを実践しています。この団体に加盟することによりテンスウォッチは自社の年間売り上げの1%を地球環境に貢献している活動団体に寄付しています。全ての製品は労働条件が倫理基準に準拠したバンクーバーの工房で手作業で作られています。しかし時計のパッケージに関して詳細な部分の掲載はされていません。サステナブルな木製腕時計の第一人者でありながら、残念なポイントでもあります。 木製の腕時計を作るブランドが多くない中で、テンスウォッチは間違いなくトップブランドと言えるでしょう。一方で特筆すべき職人の技術が見られない点は残念に感じます。テンスウォッチの価格帯で「時計の個性」が埋没している様に感じるのは残念です。

5.Ksana/ジェットブラック

おすすめポイント
  • 環境にやさしい素材を使用。
  • 視認性に優れたミニマルなデザイン。
  • 環境や社会問題に対する明確な取り組み。
気になる点
  • ブランドとしてはまだ新しく、実績はこれから。
  • 時計本体の素材が明記されていない。
  • アジアでの労働環境の透明性が不十分。

評価コメント

エレガントなデザインのサステナブルウォッチブランド、クシャナ(Ksana)ジェットブラック(Jet Black)。サンスクリット語で“今この瞬間”という意味のクシャナは2019年に誕生した新しい腕時計ブランドで、サステナブルシリコン製の腕時計を発売しています。

 クシャナのジェットブラックは自然環境に配慮したミニマルなデザインの腕時計。100%リサイクル可能な黒いストラップシリコン(珪素と呼ばれる白い砂)から作られており高い耐久性を誇ります。ケースの素材はステンレス鋼ですが種類までは明記されていません。

クシャナは持続可能な取り組みを様々な角度から実践しており、同社が取り組んでいるリサイクルプログラムでは、ストラップソーラーパネルの断熱材とコーティングにリサイクルすることができます。また時計のパッケージにはリサイクル可能な再生素材を用いることで温室効果ガスの削減に努めています。同社は「1% For The Planet」に加盟しており年間売り上げの1%を環境に関する慈善団体に寄付しています。

労働環境に関してはアジアに時計の製造元があり定期的に監査を受けていることが記述されています。この監査では児童労働、公正な賃金、および不当労働行為の使用がないことが保証されています。

しかし前述のノードグリーンやソリオと比べて透明性ではやや劣るように感じます。サステナブルな時計ブランドを長い間取材してきた私たちは、欧州労働基準の様な健全で公正な労働環境を確保している時計ブランドを好みます。

最後に私たちにはクシャナの時計デザインに明確なオリジナリティが欠けていると感じますが、簡素なデザインの時計を好むユーザーには良いかもしれません。